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ある高校生の作文 [人権(LGBT等)]

今日は、ある高校生からメールで頂いた作文を掲載します。是非多くの人に読んで欲しいとのことでしたので、ご本人と相談し、私のブログで紹介させてもらうことにしました。伝えることからすべてが始まると思います。伝える勇気を持ってくれてありがとう。彼の想いが、多くの人に届きますように。彼や私がたどった道を次の世代が歩かなくてもいいように、皆さんと一緒に今後とも活動していきたいと思います。
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「誰もが自分らしく在れる社会に」
静岡市立高等学校 定時制四年  朝原 恭章

「生きていてくれてありがとう」。そう言ってくれる友達がいます。

この高校に入学するまでは、ただ毎日が辛かった。自分から、他人から、目の前の全てから逃げていた。中学の時、僕は初めて自分が同性愛者だと気づきました。「自分は普通の子とは、みんなとは違うんだ・・・いったい自分は何者なのだろう」。そう思うようになった。さらに、同級生や、先生からの心無い言葉。学校には、自分の居場所がなかった。家に帰っても、親と衝突するばかり。先の見えない不安と、孤独感でいっぱいだった。

「これから先、一体どんな希望を持って生きればいいのだろう・・・」。そう思っていたある日、本屋で偶然見つけた一冊の本。『ボクの彼氏はどこにいる?』 この本が僕の人生を大きく変えてくれました。それは、僕と同じ同性愛者である著者の石川大我さんが、二十六歳と若いこともありましたが、何よりその内容が僕の知らなかった情報でいっぱいだったからです。

例えば、どんな時代や国にも、三十人に一人、つまりクラスに一人は同性愛者がいること。同性愛がセクシャルマイノリティ(性的少数派)と呼ばれるものに含まれ、人権が尊重されなければならないということ。等です。「これからは自分らしく生きていいんだ」。そう表紙に書かれた言葉に希望と、そして生きていく勇気をもらった。

もう一つ、僕が定時制の高校に通うきっかけがあります。この時期に放送していた[三年B組金八先生]というドラマです。それには同性愛とは異なりますが、性同一性障害がテーマで取り上げられていて、上戸彩さんが生徒役を演じ、大きな話題になりました。

そして、その生徒が、自分が何者かわからず葛藤している姿は、当時の僕自身の気持ちと重なっていました。金八先生がその生徒に定時制高校への進学を勧めるシーンがあります。「定時制は本当に色々な人がいて、そこに逃げるんじゃないよ、君の個性をのびのびと出せる場所に行ってほしいんだ、そして命の不思議さを、君の苦しみにしてほしくないんだ」。このセリフは僕がこの学校に進学する決心を与えてくれました。

期待と不安を抱えての入学でしたが、生徒だけではなく先生方も個性豊かで、すぐに友達も出来て、信頼できる先輩にも出会った。その先輩にカミングアウト(自分がマイノリティであることを伝えその後の関係をより良くしていく過程のこと)をしたのは二年生になってすぐのことです。先輩は長い時間考えてから、こう言ってくれた。

「朝原君は朝原君だろ?」。その短い言葉には、僕がずっと人から言ってほしかったものが詰まっていました。春先の寒い夜。気がつけば、僕は初めて心の底から、温かい涙を流していた。

安心して、学校生活がおくれるようになった僕は、生徒会や不登校の中学生の為のボランテイア等、自分から色々なことに挑戦するようになり、合同文化祭では友達と一緒にステージ発表もして、「不登校から生徒会長なんて大出世だよ」なんて、友達と笑い合えるようになった。

でも、今こうしている間にもどれだけ多くの中高生が、あの頃の僕と同じように苦しんでいるのだろう・・。僕が石川さんに力をもらったように今度は僕がそんな子達の力になりたい。そう思って自分のホームページを始めた。

「俺も静岡の定時だよ」そうメールをくれたのは東部の定時制に通うカズ君だった。その後も、定時制に通っている多くの仲間から、励ましの便りが届く。一人じゃない嬉しさ。そして、カズ君が言ってくれた。「生きていてくれてありがとう」。という言葉は今でも僕の心の支えになっています。

身近なところに仲間がいる!しかしそれを喜ぶ一方で、「学校で自分を出せなくて辛い」。「友達にカミングアウトしたらみんなにバラされて今不登校です」。「学校の先生がホモみたいで気持ち悪いと言っていた、自分のことを言われてるようで辛い」。こんな悲しい内容のメールが多くの中高生から送られてくる。

これまで、メディアが笑いのネタとして流す、間違った情報を、社会や学校が見逃していたこと。それが、今になって差別や偏見を生み、本当に沢山の中高生を傷つけ、自分らしさと、居場所を奪っている。このままじゃいけない。

僕は今、スクールカウンセラーという目標を持ち、勉強をしています。心に傷を負った、生徒を癒し、支え、力になりたいと考えています。今になって学ぶこと、そして、今生きていることの大切さに気づきました!

「普通の子に生まれなくてごめん」たった一人の家族である母にそう言ったことがある。今は「生んでくれてありがとう」と言いたい。

最後に、人の数だけ性があり、命があること、そしてそれは虹のように美しいものであること。そのことを知ってもらえば、今までの「常識」は、大きく変わるはずです。どうか、命の形をまるごと大切にしてください。そして、いつか、「誰もが自分らしく在れる」そんな優しい社会になってほしい。この作文が、その、きっかけの一つになればと願っています。
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(あとがき)
六月二十一日。僕はこの作文を高校の全校生徒と先生の前で発表しました。友達や他の生徒がどんな反応をするかとても心配だったけれど、自分でも驚くほど良い反応が返ってきました。「友達やめるわけないぢゃん」。「お疲れ様」と温かく迎えてくれた友達。「自分も同性が好きです」と教えてくれた子もいた。

中学の初めごろ、自分がいわゆる「普通の子」ではないことに気づいてから、僕の生活は激変しました。元々あった家庭内の問題。いじめ。不登校。自傷行為。数ヶ月ぶりに行った学校で先生に言われた言葉は「君は普通の子とは違うから」。自分は一生幸せなんてなれないと思っていました。

でも、石川さんの本や金八先生のおかげで自己肯定のシャワーを浴びることができ、自分の気持ちが決して「異常で、いけない」ものではないと知りました。

でも、今現在、自己肯定が出来ずに本当に苦しんでいる中高生がたくさんいます。そして、社会や教育のセクシャルマイノリティに対するあまりに無自覚で無知な映像や言葉に居場所を奪われる生徒がいます。

これは沢山の大人が「知らなかったから」では決してすまされない事だと思います。そしてこれからの社会、学校でそんなことはあってはいけないはずです。これからは多種多様な生き方を、認め合い、支えあい、尊重する社会を、今実際に生活している全ての人が作っていくべきだと感じます。そして僕も社会に暮らす一人の人間として、また現役の当事者の高校生として、自分の力を尽くしたいと思います。


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